建築科名物、校舎3周(約1km)マラソン。
惨敗の日々が続く。
おそらく協調性の育成も兼ね備え隊列を崩さないで走り全員の体力強化をする目的なんだと理解しているがもうそんな事を言っている場合じゃない!
若者に体力で劣る分、人生経験で補うしかない。
勝つ為には作戦が必要だ。
『閃光(先行)逃げ切り作戦!』
マラソンと言っても中距離走なのでスタートと同時に大差を付け『もう追いつけない』と心理的に思い込ませそのままゴールする作戦なのである。
教官の合図と共に高速スタート。
協調性はスタート地点にそっと置いてきた。
もう綺麗事では勝利は掴めない。
後方からは冷ややかな声が飛び交う。
それでも私は足を左右に動かし続けた。
そう勝利の為に。
足音が隣に並ぶ。
横を見ると年齢はふた周り違うのに何故か話が合う『リュウちゃん』がぴったりくっついてきた。
前のブログで書いた『糸』を一緒に歌っていた若者です。
ちょっと悪ぶっているけどセンスも良く顔もイケメン。
さぞかし女性にモテる事でしょう。
この男にだけは一矢報いたい。
いや全国のダメ男代表としてイケメンに勝つのは私の責務。
正攻法ではこの男に負ける。
一緒にゴールしましょうね、みたいな顔してペースを少し緩め校舎2周半に差し掛かかる。
帽子を脱ぎ捨て髪を振り乱し一気に足を加速させる。
残りの体力を全て注ぎ込んだ渾身のラストスパート。
っと思ったら2秒で抜かされそのままリュウちゃんゴーーール。
『まだまだだね』
息も整わず魚みたいに口をパクパクしている私を置いて実習棟に戻るイケメン。
全てにおいて敗北したマラソンでした。