はじまりの始まり

遊園地入場門までのアプローチ。

それは駅や駐車場から家族や友人たちとこれから起こる楽しい出来事に胸を弾ませるほんの数百メートルのアトラクション。

そんな中に一人の家具屋(仮)が佇んでいた。

 

私がumikaguを始める少し前のお話。

 

『オレは家具屋になる!』と海賊漫画の主人公のようなテンションで会社に退職願いを出し工房兼shop探しに悪戦苦闘していた。

鼻息荒く出航した船だが家具を作る場所も無ければお客さんもいない。

世間ではこの状態を『無職』というのだろうか?

いや『職』がないわけではない。『仕事の依頼』が無いだけだ。

 

工房探しと並行して商品もホームセンターの工作室をお借りして作っていた。

少しづつ減っていく残高。少しでも前進していると思いたくてハンドメイドのクラフト市に出店した。

 

遊園地の入場ゲート近くで出展者募集の応募に気持ちが高ぶる。

週末の遊園地。何千人もの来場者が来ることだろう。

しかも高校生の時に初めて合コンしたちょっと甘酸っぱさが残る思い出の場所。

これは商品が足りなくなっちゃうな。

 期待に胸を膨らませ軽自動車に制作した家具を積み込む。

 

イベント当日。

来場者が入場口へと押し寄せる。

想像していた家族や恋人たちの姿は少なく多くの人たちは自作のコスチュームに身を包み浮世離れした格好をしている。

 

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ピンクのサテンに身を包んだ女性に聴いてみると『この遊園地で入場券だけ買って好きなアニメの衣装を着て撮影するんです』と嬉しそうに答えてくれた。

 

恋人たちの聖地がコスプレイヤーの聖地に変わっていた!!!!!!

 

商品を見ることもなくただ目の前を通り過ぎる漫画の中から飛び出してきた人達。

 

『あっ!HUNTER×HUNTERのキルアがいる!!』なんて見向きもされない私の家具や雑貨を挟んでコスプレーヤーを眺めていた。

スケボーを脇に抱えた『キルア』が私の前を3往復ほどした頃には太陽が夕日に変わっていた。

 

売り上げ0円

 

出店料とガソリン代、高速代を引いたら完全に赤字だよね。

軽自動車に売れ残った商品と惨めな気持ちを積み込み帰路についた。

 

好きだったキャラクターが嫌いになり約5年が過ぎた。

千葉県の内房を経て外房の海沿いに家具屋を移転させ家具作りで生活する事が出来るようになったある日の出来事。

 

若い雰囲気のあるファミリーがご来店。

まだ小さなお子さんが頑張ってお店のブランコに乗っている姿が微笑ましい。

 

旦那さんが『遊園地前でイベント出店していましたよね』

 

『はい!していました!!』

 

『私、あの時にumikaguさんからキーホルダーをいただいたんですよね』

 

当時お店を持っていなかった私はホームページのURLをプリントした木製のキーホルダーをイベントで興味を持っていただいた方に配っていたのを思い出した。

 

そして出来上がったばかりのベンチを購入して頂きました。

 

あの日の悲しさが嬉しさに変わった夏の出来事でした。